飾り道具黄色い声が聞こえる。何が起こっているのかと思えば、女官に止められる。 「……何があるのだ?」 怪訝そうに客殿に待たされた尚隆は呟いた。久しぶりに会い、抱けると思えば止められる。 「――会いたいのだがな」 零れる言葉は本音の欠片、こんなにも愛しているのかと実感させられた。 「……って」 「ん?」 「この格……嫌だ……」 「陽子?」 座って待っていた尚隆は立ち上がり、扉まで駆け出して開いた。 そこには確かに緋色の髪と緑玉の瞳をした陽子が、照れ臭そうに立っていた。 「どうしたその格好は」 「……六太くんと氾王の仕業なんだ」 「なぜその二人なんだ?」 「六太くんが蓬莱から服を持ち帰って、それを氾王に渡したらしくて……改良して持ち込んで……」 見慣れない衣服を尚隆はまじまじと観察した。質問に対して、陽子が知る限りの返答を返した。 中世ヨーロッパ時代の、主に貴族の着衣していた服装だという。改良して膝丈まである上着――コートの生地は薄地で、軽い感じに仕上げているという。首元の折り返した襟、挟まれたゆったりとしたスカーフ、久方ぶりに穿いたソックスなど、聞きなれない言葉が並ぶ。 「だがこれは男用ではないのか?」 「そうなんだよね」 これで刀を持ち、王としての威厳を放ちながら立てば、さそかし女性は黄色い悲鳴をあげることだろう。 「だから恥ずかしくて」 「なぜだ?」 「男物が似合うのも、ね」 女として好きな男の前では綺麗な格好でいたいものだった。決して来ている服が綺麗ではないことはなかった、しかし女として着飾るべき服ではない。 「何、似合えば関係ない」 恥ずかしくて頬を染める陽子、それに触れて笑う。 「俺も着てみるか?」 「尚隆が?」 「似合うかはわからんがな」 「いや、そんなことないよ、似合う……」 想像するだけで似合いそうだった、やはり長身の男性に着てほしいと思う。 「……女物の洋服か? それが来るまで待つか」 「え?」 「男物の服を着て並び、愛し合ってもな」 「……それって」 「あの馬鹿に頼んでみるか、どうせなら揃えて持ち帰れと」 笑って言う尚隆につられて陽子もまた笑う。 「それまで着るのは控えて……陽子」 「着替えてくる……ちょっ、うわあっ!」 抱え上げられて、堂々と廊下を闊歩される。恥ずかしくて火が出る、とはこのことを言うのだろうか。女官の目に晒されながらも、臥室までたどり着いて臥牀の上に押し倒される。 「尚隆!」 「隠し立てする必要はあるまい」 「そうだけど、けど、それに……」 「着替えは必要ない、これから脱ぐのだからな」 「ばっ……」 怒りの声を塞がれる。唸って睨んで、そして瞳を閉じた。諦めたかのように。 「男物を着ていようが何であろうが、陽子は陽子だ」 「私は……」 「気にする必要はない、俺は外見に惹かれたわけではないのだから」 その強い内面に惹かれたのだから。 「騒ぎで時間をとられたからな……」 気にすることなく、尚隆は陽子を抱き始めた。 服など着物など所詮飾り道具の一つ。 本当に惹かれているのは、相手の心なのだから。 This fanfiction is written by Mgami Narumi in 2004. [無断転載・複製禁止] Reprint without permission and reproduction prohibition. |
真神なるみ様のサイト「幻想故国」40万ヒット記念フリー配布作品を頂いて参りました♪ 沢山あるので選ぶのに苦労しましたが、ヨーロッパ貴族風男装の陽子なんて、いいでしょ〜vvV ベル○ラのオスカルのイメージだそうですよ。これで某絵師様を呪いたいくらいですv で、まあ、尚隆の殺し文句も気障でよござんしょ? この二人で貴族風にセットで描かれたら尚陽ファンが卒倒しそうですね・・・ 陽子さんにドレスを着せたくはないですか?←誰に向かって? 他にも素敵な尚陽や景陽、驍李がアップされているので、まだの方は是非! (メニューに近道リンクがありますよ♪) |
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