情欲の欠片予感を感じて廊下を足早に歩く。たどり着き、側仕えの女官を下がらせて、扉の前で名を名乗り、返答を待たずして中へと入った。 「……返事はしていないのだけど」 「失礼かと存じてはおりますが、その姿では説得力というものはございません」 やってきたのは慶東国冢宰浩瀚、半眼で睨みつけるのはその主だった。普段着ている高価な着物ではなく、袍子をまとっている。市井に紛れる気だったのだろう。 「金波宮内ではお止めください。持参して別の場所でお着替え下さい」 「……止めないのか?」 「止めても強引に出奔なさいますので」 ですが、と一言付け加える。 「今夜はお付き合い願います」 「え……うわあっ!」 強引に陽子の腕をつかみ上げて、臥牀の上に押し倒す。 「……浩瀚、政務では……」 「政務とは一言も申し上げておりませんよ」 にこり、と何か企んでいる表情に陽子は疑わしい目で見つめた。 「久しいものでございますから」 「いや、そうだけど……あまり疲れたくない……」 臥室で人払い、そろった駒は男と女。主と近臣という立場を捨てて、愛し合ったのはいつのことだろうか。 「私も疲れていないわけではないので、長くは……」 「うん、そうなんだけど。着替えてもいいかな」 「駄目です」 王として普段身につけている衣服は、幾重にも重ねられている。情事に脱がすのも苦労を強いられることもあった。 「今は着物が少ないですから」 「……浩瀚」 恥ずかしげもなく呟かれて、陽子は頬をほのかに赤く染めた。 「見慣れない姿かもしれませんね」 普段、共に降下することはない。日々見かける姿は、王と冢宰の姿で、服装もそれなりに求められるものだ。 「私も着替えたほうが良いかもしれませんね」 「想像できない、浩瀚が袍子を着た姿は」 「私も想像したことはございませんでした。けれど目の前にありますから」 微笑み髪を解いて口づけを落とす。降り注ぐような漆黒の髪が肌に触れて、陽子からも笑みが零れた。 普段見慣れない姿で、沸く情欲もあることをこの時、身を持って体感した二人だった。 This fanfiction is written by Mgami Narumi in 2004. [無断転載・複製禁止] Reprint without permission and reproduction prohibition. |
こちらも真神なるみ様の「幻想故国」40万ヒット記念フリー配布作品です。でもっ、リクはわ・た・しv 40万ヒット記念でフリー配布をするSSSのリクを受け付けていたので思わず、久しぶりに浩陽を!とお願いしました。 尚隆×陽子アンソロジー本主催者様に顰蹙なリクだったかも・・・(恥を知らん奴 ^^;) 尚陽のフリー配布作品に豪華な衣裳の陽子さんがあったので、浩陽のリクは質素な姿にしたのですが、脱がしやすい・・・(///) 飾り気のない少年のような姿から、瑞々しくてしなやかな女性の裸体が現れればそれは美味しいでしょうv ブラボーですvvV これで▼を妄想したのはわたしだけですか? 「お前はっ、脱がし難い衣裳は嫌いだったのではないのか!」 正装の一番上に羽織った大袖の衫を肩から落とす浩瀚に陽子は叫んだ。 「あの折りは長らく待たされていましたからね。今宵のように時間や心の余裕がある時には手間暇をかけて想いを遂げたいものです」 浩瀚は璧を大事に持ち上げて、裙帯を外すと慎重に卓子に置くと自分を睨め付ける碧の瞳を覗きながら、陽子の腰に腕を回した。 「結局、どんな姿でも脱がすんじゃないか・・・」 「何も纏わないお姿が一番美しいですからね」 浩瀚が紅い髪を結い上げられて露わになっている耳元で囁くと歩揺がしゃらりと鳴った。そして、両腕を捉えられながらも浩瀚は背中で帯を解き、幾重にも重ねられた裳や裙、襦を本人が脱ぐよりも軽やかに外していった・・・ 当サイトはただ今、衣裳を脱がす話題で盛り上がっているものでつい・・・(^^;ゞ なるみ様、タイムリーで期待以上の作品をありがとうございます! |
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