co様〜王子様藍滌

Illustrated by co in 2003.





美しい王

 氾主従の滞在先である淹久閣の園林(ていえん)で陽子の足は止まった。
 そこには鳥と戯れる男とも女ともつかない麗人がいて、彼の人は五百年王国の王を猿扱いする毒舌家でもなく、金波宮で関わる者に何かと口うるさい客でもなかった。陽子は範が三百年続いた理由の一端を覗いたような気がした。
「景王?」
自分の号を呼ばれて陽子は我に返った。そして、氾王の手から飛び立った鳥を見送った。
「随分と名残惜しそうじゃ」
氾王は笑みを浮かべて言った。
「ええ、とても美しい光景だったので。どうやら、わたしが台無しにしてしまったようです」
氾王は閉じた扇子を口元に当ててくつくつと笑った。
「並の人間であれば、近づいた時に逃げておる。景王は気配を殺すのが得意なようじゃ」
「それは・・・」
陽子は思わず顔を逸らした。
「王には必要な能力じゃ。それに、苦労も知らぬ王では役に立たぬ」
今度は陽子は氾王を真っ直ぐに見つめた。氾王は優しく微笑み返した。
「何か用でもおありかえ?」
「いいえ、特には。少々時間が取れたのでご機嫌伺いに」
「それはそれは、嬉しいことを。では、茶をしんぜたく思うのだが、いかがかえ?」
「喜んで」
氾王が優雅に陽子の手を取ると、二人は並んで淹久閣へ入っていった。

−了−
2003/07/15UP
This fanfiction is written by SUIGYOKU.


このイラストはco様のサイト名物(?)「王子様な氾王」です。サイト開設前から配布すると伺っていたので、楽しみにご挨拶に行くと目的の氾王様だけでなく、小松氏も欲しくなり、そうなれば閣下だけを外すわけにはいかないと、3人まとめて拉致ってきました(笑)
こんな短い文でも良ろしければ、co様へ捧げます。持ち帰りもOKですが、アップの手間を考えればお薦めは出来ません ^^;)
coさんの麗しい世界は13℃へ・・・(メニューに近道リンクがありますよ♪)

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背景素材:MayFairGarden

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