我が意違えたもうな



「其方の従軍は認めて来た。だが今回は私の指示に従ってもらう」

真紅の苛烈な瞳が李斎をピタリと見据えて言い放った。



「主上のお考えは推察致します。隻腕の私では此度の戦陣、群雄に並ぶ事などとうてい適わないと」

唇を薄く引き結び、己が力不足を言葉にする口惜しさに微かに肩が震えた。

驍宗は是とも否とも言わない。

李斎と驍宗の視線は互いを見据えたまま膠着していた。

一度深呼吸する。ゆっくりと目を閉じ、再び目を開いた時は先よりも鋭い視線で見上げた。

「ですが、此度だからこそ、私は共に参りとうございます」

視線が圧し返して来る。徐に言葉が耳に入った。

「泰麒と共に、ここで戦勝の知らせを待っているのが良い」

「いいえ、この凍土に耐え続けた年月、私も瑞州師将軍として任を果たす所存にございます」

「李斎!」

強い呼び掛けは怒気ではなかった。

「其方の覚悟、私の目はごまかせぬぞ」

「・・・」

「其方には長くこの国を見てもらわねばならぬ」

この話はここまで、とでも言う様子で驍宗が踵を返す。

「ならば尚更、ここで待っている訳には参りません」

はたと驍宗の肩が止まる。

「では」

肩ごしに鋭い目線で見つめられ、寒玉の鞘が抜き払われた。

抜き身の剣に引立てられた紅玉の瞳は鮮烈な覇気の光輝を放つ。

「私の剣を止められるか!止めてみよ!ならば、従軍を許す」

「承知致しました。どうぞお試し下さい」

李斎の剣は主の心を映し水鏡の如く迷いなき静謐に佇むかのようであった。

This fanfiction is written by NYAON in 2005.

[無断転載・複製禁止] Reprint without permission and reproduction prohibition.


<にゃおんさんの後書き>
【ホントは行間に現したかったワタシの妄想】
白圭宮奪還戦前日、李斎の決意は揺らぎない。しかしそれは戴国の為、己が身を王の盾とするものであった。
李斎は唯庇護し傍に置く女ではない。生きうる限り武人で在り続けるだろう。
素早く展開する接近戦に特化して鍛え込んだ剣技を驍宗も見守ってきた。
あと、白圭宮奪還戦で彼女の弱点になるのは何か?互いに交わす言葉は不要。
「私の剣を止められるか?」
明日、戦に臨む李斎へ課した最後の関門である。

こういう補足(うぉーん「言い訳?」)なしで伝わる筆力を身に付けたいなぁとワタシは頑張ります。


<管理人の蛇足>
驍宗李斎の大人の絆を妄想する一助として戴きたい、とフリー配布されていたのを攫って参りました。
知っている方々が次々と驍李に嵌って行くと、なんとなく自分でも書いてみたくなりますよねv
と、ひとつくらいは妄想してみて、驍李は読むモノだと思い知らされました。
皆さんの愛にかなうはずもなく・・・
(李斎にだけならタップリあるのですが=3)

もしも驍宗が泰王に復帰して李斎が白圭宮に復帰する日が来るならば、瑞州師の州司馬が適任ではないか、と夢見ています。
隻腕の将軍というのも格好いいんですけどね。
琅燦にオートメールを作って欲しいなぁv(殴!)
▲これを考えたのは絶対にわたしだけではないはず!

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