二つの玻璃の酒杯には鮮やかな紅玉色の液体があった。
それは今年採れた葡萄で作られたもので、その葡萄は仕込んでから二ヶ月ほどで熟成されるのだと藍滌は言っていた。飲んだ時には瑞々しい葡萄の香りがした。
「どうやら上の空のようだね、今宵はここで退散するとしよう」
藍滌がそう言って卓子に片手を置いて立ち上がると、陽子もすぐに立ち上がった。
「待って、二人きりでいられるのは年に何回もないのに・・・」
「それでも、そんなに思い詰めることも、慌てることもないのだよ」
優しく、それでもどこか寂しい響きを含んで藍滌が言った。陽子は首を横に振って俯いた。
「貴方なら、わたしをその気にさせるなんて簡単なことなのに、意地悪じゃない?」
陽子の肩と声は微かに震えていた。
「その場の雰囲気に流されるなんてそなたらしくはない。年に何度も逢えずとも、時間はまだまだあろう。ゆっくり考え直した方がよい」
陽子はきっ、と顔を上げるとその碧の瞳で藍滌を睨め付け、ゆっくりと歩みよった。そして、藍滌の両腕の内側から背中にほっそりとした腕を廻し、その胸に顔を預けた。
「悩んでもいなければ、慌ててもいない。ただ、貴方が満足できないんじゃないかと不安なだけ・・・」
藍滌はそう言って目を閉じた陽子の紅い髪を撫で、頼りないほどに華奢な肩を抱き締めた。
「そんな心配は男の方がするものだよ。そなたを慕う男は数多(あまた)おるのに、時折にしか逢えぬ者で耐えられるかえ?」
陽子は藍滌の腕の中でくすくすと軽やかに笑った。
「貴方はいつも忘れがちな大切なことを教えてくれるから、だから、頑張れる」
言って陽子は藍滌を見上げた。その碧の視線に吸い込まれるように藍滌は顔を落とし、口づけるとふわりと陽子を抱き上げた。

 藍滌は牀榻の前で陽子を静かに降ろした。
「まだ、決心は変わらぬかえ?」
陽子は眼をわずかに伏せて頷くと、震える手で帯を解き始めた。藍滌はそんな陽子の震える手を取り、口づけると陽子を抱き締め、今度は唇に口づけて軽く開かれた桜桃色の艶やかな唇に舌を差し入れた。陽子がそれに応えて柔らかい舌を絡めてくると、藍滌はそっと陽子の身につけていた衣を次々と床に落としていった。そして、最後の布を落とすと、陽子から離れた。陽子は小さな悲鳴を上げ、片腕で胸を、もう片方の手で両脚の付け根を隠して、揺れる瞳で藍滌を見上げた。藍滌は陽子の碧の瞳を見つめながら、上衣を脱いだ。陽子は不自由な姿勢のまま牀榻に腰掛け、両脚を上げた。藍滌も牀榻に両膝を載せてまだ自分を見つめている陽子を見下ろした。
「美しいよ」
陽子の耳元で囁くと藍滌はゆっくりと、未だどんな男も触れたことのないその瑞々しい肌に触れた。


2003.11.20 UP
This fanfiction is written by SUIGYOKU.
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人を呪わば穴二つで、何故か書く羽目になっためれーなさんリクによる氾陽ボジョレー・ヌーヴォ編です。めれーなさん、完成が遅れて申し訳ありませんでした。
だれもわたしに色っぽいものは期待してはいないだろうと信じています。

そして、駄文の短さを誤魔化す為に可憐な陽子さんの挿絵をこちらに飾らせて頂きました。^^;)
これで寡作なめれーなさんの挿絵3点、SSS1点ゲットなんて、わたしは相当めぐまれている?
うわ〜! 今頃気付きました。改めましてありがとうございますぅっ!!!
では恒例の(←やめぃ!)、ボジョレーらしく、めれーなさん、じゅ・てーむv
めれーなさんのサイトbanqueteへの近道は「珠玉作品蒐集部屋」のメニューにリンクがあります。

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