変わり茸 〜陽子&景麒 Albatross バージョン |
それを一度食すと1〜3日だけ身体に変化を起こす、そんな不思議な茸が常世には存在するという・・・ 今回それを食したのは慶国の王と台輔の二人、いかな騒ぎが巻き起こるやら、もとい、どんな変化が二人に訪れたのか、それをお伝えしよう。 慶国主従が二人で昼食を共にし、互いの政務に戻ろうとした時、台輔がよろけ、壁にすがって座り込んだ。 「景麒、大丈夫か!」 陽子が己の半身に駆け寄り、その肩に手を乗せると、頼りない手応えに慌てて顔を覗き込んだ。 揺れる紫の瞳、上を向いて反り返る睫毛、軽く開かれた唇、滑らかな輪郭、華奢なうなじ、それは陽子の知る半身の姿ではなかった。景麒は己のほっそりとした両手を持ち上げると溜息をついた。 「食事に変わり茸が入っていたようですね。主上は大丈夫ですか?」 もの言いはいつもの半身だったが、声は耳に心地いい歌声のようだった。陽子は己の胸に手を当て、碧の瞳を見開くと、くつくつと笑い出した。 「元が大してなかったから気付かなかった。性別が逆転する変わり茸もあったんだな」 そう言うと、陽子は女官を呼び、太師と冢宰を呼ぶよう命じた。女官は低くなった陽子の声を心配したが、大事ない、と女官を急がせた。 太師と冢宰は体に合っていない官服を着ている金髪の美女に事情を理解したようだった。 「変わり茸ですか・・・」 「そのようだ。わたしはあまり変わっていないから大丈夫だが、景麒は今日の政務は休ませた方がいいだろう。まあ、この姿を隠すのは惜しい気もするけどね」 「主上もそのお声では皆に騒がれましょう」 「王と宰輔が共に政務を休む方が問題だろう。わたしの声など、どうとでもごまかせる。それに、滅多にできない経験だから、じっとしているのは勿体ないとは思わないか?」 楽しげに話す陽子に景麒は「主上!」と叫んだが、陽子はそんな半身に微笑みかけた。 「お前の不幸は麒に生まれたことだな。その姿で小言を言われても気にはならないよ。羽目を外すようなことはしないから、安心するがいい」 主の優しい言葉に景麒は紫の瞳を見開き、太師と冢宰は顔を見合わせて肩を竦めた。 陽子は側に仕える者達に事情を話し、普段と変わりなく過ごしていたが、回廊で左将軍を見かけると、機嫌よく呼び止めた。 「少しでいいから、剣の相手をしてくれないか?」 「そのお声はどうされたのです?」 左将軍は目を見開いた。 「景麒と怒鳴り合ってね」 陽子が片目をつむると左将軍はひとつ息を吐いた。 「すとれす発散ですか・・・」 左将軍はいつにない陽子の力強い剣に驚いたが、すぐにその変化に対応した。すると今度は陽子の方が自分の力を持て余し、剣を大きく振り過ぎて左将軍に付け込まれて舌を鳴らした。 「さすがたなぁ、今日こそ一本取れると思ったのに・・・」 「わたしの方こそ感心させられましたよ。いつの間に鍛えられたのです?」 陽子は声を上げて笑って、事情を話した。 |
政務を終え、内宮に戻ると虎賁氏と交代する虎嘯が待っていた。 「男になった気分はどうだ?」 「別に、普段とあまり変わらなくて気が抜けている。これが1日だけでなければ、女王を嫌がる連中に嬉しいだろう、と言ってやるんだけどな」 陽子の大僕は声を上げて笑った。 「男だろうが、女だろうが、陽子は陽子だ!」 虎嘯の言葉に陽子は眉根をよせた。 「たかがこの程度のことで女王であることを責めらるなんて理不尽だ!」 「そうそう、だから気にする必要はないんだよ」 陽子は目を見開いてから、くつくつと笑った。 「そうだな」 そう陽子が言うと、目の前から金の髪をなびかせて、きらびやかに着飾った陽子の半身が駆けてきた。 「わたしよりも似合うな。それに軽やかに動いている」 まだ離れているにもかかわらず、獣の耳を持つ半身はこの言葉に片眉を上げた。 「冗談ではありません!主上からもこの格好を止めさせるように女官達に言って下さい」 「似合っているのに勿体ないじゃないか。それに明日の昼まではその姿なんだから構わないだろう。大体そんなにいやなら、最初から着なければよかったんだ」 「元に着ていた官服は体に合わないので着替えようとしたら、女官がこのような衣裳しか持って来ないので仕方がなかったのです。それもこれも主上が普段より着飾ることを厭われるからです。責任を取ってくださいますね」 紫の瞳で睨めつけられると陽子は声を上げて笑った。 「髪を結い上げられないだけ、わたしよりもましだよ。それにわたしはその姿が気に入っている。滅多にあることじゃないんだから、もうしばらく、その姿でいて欲しい」 主に褒められ、笑顔で頼まれれば否と言えるはずもない。 「御意に」 と答える他になかった。それに自分の片腕に陽子が気軽に飛び付いて来るのも悪い気はしなかった。 「夕餉も一緒に取れるだろう?食事が終わったら、碁を教えてくれ!」 「はい」 今度は即答できた。 「景麟って呼んでもいいか?」 「それだけはご遠慮申し上げます」 この言葉に陽子は半身にもたれかかって笑い、台輔も僅かに主にもたれかかった。 翌日に元の姿に戻った慶国主従の日常も元に戻っていた。 「昨夜はかなり仲睦まじかったと聞いていたのだがな」 禁軍左将軍は台輔に説教をされている彼等の主を眺めながら虎嘯に語りかけた。 「陽子は女でよかったんだよ。その方が慶は安泰だ」 禁軍左将軍は首をかしげて虎嘯を見た。 「そんなものか?」 「男にとっては特にな」 虎嘯に胸を叩かれ、禁軍左将軍は頷いた。 「そうかもしれないな」 そうして、二人はくつくつと笑った。 This fanfiction is written by SUIGYOKU in 2005.
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モーモ様の変わり茸設定に惚れ込んで、書かせて頂きました。詳しい効能はモーモー様の「一寸陽子」「ぷち・けーき」でご確認下さい。 変わり茸で性別が逆転するSSSを読みたくなりまして、「読みたいモノは自分で書く!」がモットーの拙サイトですので、勢い込んで書かせて頂きました。。 最初は誰の性別を換えれば面白いかで悩みましたが「景麒ならば美人になるv」と、そして「どうせなら二人纏めて性別を逆転させてやれば面白い」と、悪ノリしています。 わたしは舒覚と陽子に対する態度が異なる景麒が書けないので景陽のCPは難しいのですが、性別を逆転させたら何故かラブラブ・モードになることに気付きました。 麒に生まれたことが景麒の不幸、と同時に女であることが陽子の不運なのですから、逆転させればハッピー・エンドになるはずでは?(笑) なお、モーモー様からは変わり茸の胞子がどこへ飛んでいってもかまわない、というお言葉を頂いています。慶国以外でも遊べますよねぇv(報告を忘れずに!) 成人した朱晶や六太とか、ちび尚隆、ちび利広なんて読んでみたいと思いません? イラストでも見てみたいくらいですよねv |
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