冬の寒波も過ぎ去り、うららかな小春日和の午後。とある少尉の一言からそれは始まった。 「尚隆大佐と陽子サンってどちらがつよいのかな」 |
「えーそりゃ天下無敵の呼び声高い大佐でしょう」 「いやいや、あの配下の軍部全員を信奉者にしてしまった"焔の"も中々侮れんぞ。サバイヴァル実習で凶悪・最悪コースのただ一人の生還者だっていうしな」 (どんなサバイヴァル実習だ) 東方軍部指令部・延部隊の成笙と帷端は声をそろえていった。 「「サバイヴァル戦に持ち込んだら陽子サンが有利か?」」 かくて、この話から始まる噂は怒涛の速さで広まっていくのである。 「どうなんだ実際」 「"焔の"は慶部隊で色々と聞くしな」 「おいおい、大佐の東部内乱<元州の乱>の時をしらないのか」 「だれか対戦カード組まんかなー」 「「「「はぁ…朱衡さん何かしてくれないっすかねー」」」」 |
「大佐<しゅじょう>。現在↑のような噂で当指令部は持ちきりなのですが」 美しい形の眉を動かすことなく、朱衡は己の上司<馬鹿殿>に言った。 「何を…女相手に俺がむきになるとでも…」 「気になるんですね」 朱衡が見たもの。それは勝った後はどうやってマイラヴァー<陽子>を苛めてやろうかと「取らぬ狸の皮算用」をする、スケベ親父の尚隆であった。 「ふ…ふふん。そんな事言ったって、陽子は慶部隊率いて諸国漫遊しているじゃないか」 顔を引きつかせつつ、ちょっと強気に言ってみる尚隆。 じりりりりーん。東方司令部に電話がなった。 「はい…はい。……大佐。中央<黄海>に陽子サンが滞在しているそうです」 「…我々人間兵器<神籍に入っている者>が本気で戦ったら周囲に被害が出るじゃないか!」 じりりりりーん。東方司令部にまた電話がなった。 「利広中佐が碧霞将軍に掛け合って、中央<黄海>の練兵場あけてくれるそうです」 「………あ…ほっほらそんなこと大総統<天帝>が許すわけないし」 ぴちゅちゅちゅちゅん♪ 手紙<青鳥>が大佐の机に届く。宛名は…大総統<天帝>!? 『"陽子VS大佐"面白いからオッケーvv』 なんつー薄っぺらい内容。なんつー軽い大総統<天帝>なんだ! |
【レディースアーンドジェントルメン!!中央<黄海>の練兵場にようこそv】 マイクを持ってノリノリな利広中佐。お祭り騒ぎをさらに酷くしそうなこの人に司会を任せてよいのか!な皆の疑問を置いておき、司会続行。 【今日はめでたいお祭りでーす。なんてたって僕の623回目の誕生日なんでーぇっす。いぇーい!!!】 「ふざけんな!!!!」 全ての観客からのブーイングが会場に鳴り響いた。 【うぉっほん。では気を改めましてサクサクと進行。本日のメインイベント! "でたらめ人間の万国ビックリショー"!焔VS鋼 国家錬金術師対決!!】 【青コーナー!!鋼の錬金術師、小松尚隆!!】 会場から、「仕事やれー」「娼館ばかり入り浸るなー」「俺の彼女返せ〜!!」など公私にわたる恨みの声が上がった。 ふんっと一般兵<部下たち>の声に耳も貸さず、不適な顔をする尚隆。 【赤コぉーナぁー!焔の錬金術師。中嶋陽子ぉぉぉ!!】 心なしか、利広中佐の呼び声に力がこもっている。そしてその呼び声とともに、陽子応援団から強烈なコールが始まった。 「勝つのは景帝! 勝つのは陽子!勝つのは景帝!勝つのは陽子!勝つのは景帝! 勝つのは陽子!勝つのは景帝! 勝つのは陽子!勝つのは景帝!勝つのは…!」 会場中の期待を背負ってやってきた、紅の髪を風に靡かせる炎の錬金術師・中島陽子は、すっと己の右手を掲げた。そして「ぱちん」と指を鳴らす。発火布によって生み出された見事な炎は鳳凰を模り、会場中の観覧者たちを虜とした。 「私だ」 『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』 『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』 男女から区別なく、黄色い悲鳴が上がった。 【それでは、READY FIGHT!!】 レフリーの声とともに、爆煙があがる――。 <20分後> 錬金術は、術師の体力を消耗するため、その殆どが一撃必殺である。それにもかかわらず、 それぞれの特性ある錬金術を使い、争うが中々決着が付かない。 そして業を煮やした尚隆が必殺の錬金術を使うことを決意した。 焔に勝つには…陽子を「無能」にするその方法とは! 【おぉっと!ここで大佐の秘儀・降雨錬金術がでたぁぁぁ!】 〜ものしり利広さんの豆知識〜 はーい、ここで利広さんからどうやって雨を降らせるか説明しよう。 まず、いつもの様に、錬金術で「ロケット」を作りまーっす。なるべく空高く飛ぶタイプのものでーっす。勢いよく飛んでいくロケットの中には塵や微量のゴミが沢山詰まっています。そして空中でそれらを撒き散らすんだ!ロケットの勢いで空気をかき回します。で水蒸気と散乱した「核」が結合!結晶になるんだねー。それらが地上に降りてきて、雪になりまーっす。雨を降らせるにはそれなりに別の「核」が必要なんだけど、今日は陽気が暖かいのでぇ…恐らくこんな風に雪が雨に変わって… 【土砂降りだーぁぁぁぁぁ!…さあて、発火布を使えなくさせられた焔の陽子さんはどうするのでしょ…うわぁぁぁぁぁ!】 実況の利広から、悲鳴が上がった。実況席からはちょうど陽子の様子がよく見て取れたのである。雨の瀑布の向こうから見えたのは――。 |
【さ…サバイヴァル陽子だぁぁぁ!危険です、これは大変危険です。どうするんでしょう尚隆大佐ぁ!!!】 ゆらりと揺れる、赤い髪の毛がまるで血で染め上げたような感じがする。もはや、最初の巧地方の実習の時に合わされた地獄体験がよみがえっているようで、誰にも止められない。慶部隊の隊長だけが持つことを許される水寓刀の滑らかな刀身をなめると、こういった。 『私立横須賀学院高等学校1年A組出席番号女子15番…中島陽子…私は正しい…絶対、負けない』 【大変です。バトルロ○イアルの読みすぎか!あの恐ろしき魔性の女!相馬光子になりきっています。衣装までセーラー服に替えております〜!これに打ち勝つには、やはり前年度チャンピオンの設定である川田になりきるか、はたまた最後に勝ち残るワイルド・セブンの七原秋也になるのかぁぁぁ!どうする大佐〜!】 自分の身の危険が想像できないスケベ親父の尚隆大佐は、陽子が相馬光子状態であることに気がつくと、寧ろ微笑んだ。 ――相馬光子と言ったら、相手の男子が死ぬ前に、あーんなことやこーんなことをしてくれる訳で…えっとぉ。ここは負けちゃおうかなー。あ!でも優勝商品は相手のものを自分のものに出来るんだから… 何かを決意したスケベ親父(すでに大佐という尊称すら放棄)は、無表情でマシンガンを作り出し、コインを投げた。 【おぉっと!大佐がコインを投げた…つまり、殺戮マシーン!人間的感情無持の出席番号男子6番桐原和雄になりきるつもりだ!この戦いはまさしく"でたらめ人間の万国ビックリショー"にふさわしい演目となってきましたぁ!】 雨が降る中、二人は一歩も引かない戦いを繰り広げる。 大佐が「ぱらららら」というBGMとともにマシンガンを連射すれば、陽子は出来た傷を己の錬金術で作り上げた賢者の石≪碧双珠≫で癒す。 陽子が神速で大佐に剣で切り込むと、エージェント・スミスばりにその剣戟を退ける大佐。しかし、その戦いにも決着が付くときが来たようだ。 己が勝つために相手の切り札を封印した。 そう思い込んでいた大佐は、しかしながら、己が引き起こした雨に邪魔をされていたのだ。 中々決定技を決めれらない大佐。だが、先ほどのマシンガンの連射によって陽子の発火布<てぶくろ>は破れてボロボロである。 ――ここで雨を止ませれば! 大佐は上空の雨雲に向かって、今度は雨雲を切り裂くようなロケットを打ち込んだ。 光線とともに、雨雲が切り裂かれ、青空がちらほらと見え始めてきた。 暫くすると、戦い始めたころのような、冬場特有の澄み切った青空が臨めた。 その時である。 「狩人機会<ハンターチャンス!>」 いったい、どのくらいの人が覚えているのかという古い番組の言葉を言うと、大佐は陽子に踊りかかった。 手袋は、ぼろぼろである。確かに『右側の手袋』はぼろぼろであった。 「大佐、手袋は…もうひとつあるもんなんですよ?≪兵は詭道なり≫…あなたが最初に教えてくれたことじゃないですか」 パチン! 爆風と焔と共に、大佐は吹き飛ばされた。 彼の望みは叶わなかったのである。 【勝者・焔の錬金術師、中島陽子〜!】 会場中から賞賛の声が響いた。もちろん陽子応援団からも陽子コールが広がる。 司会の利広が優勝商品は何が良いかとたずねた。 「もちろん、楽俊の慶部隊配属です!」 楽俊獲得を密かに進めていた各上層部は、頭を痛める事となったのだが、それはまた別の話である。 「あれー、利広殿?今日は練兵場にいっているはずでは?」 要人警護で練兵場に行けなかった桓たい少佐は、不思議そうに尋ねた。そんな彼に利広はこう答えた。 「優雅な生活しかしたことがない、この僕にあんな野蛮なものなんて観戦できないよ」 そういう彼の足元には、数枚の紙幣が。 「…いったい、いくら稼いだんですか」 しらを切る利広中佐に、いつ彼の錬金術・獣体変化術が展開されるか、非常に不安なところであった。 |
寝不足と疲労で重い体を無理に起こして、制服に着替えて下に下りた。何をするにも億劫で、おざなりに顔を洗ってダイニング・キッチンに行く。 「…おはよ」 流しに向かって朝食の用意をしている母親に声をかけた。 「もう起きたの?最近早いのね」 母親は言って陽子を振り返る。チラリと投げられた視線が陽子にとまって、すぐに険しい色になった。 (は!もっもしかして気づかれてる!?) 「お金あげるから、髪の毛切ってらっしゃい」 (ごめんなさい、お母さん。そのお金もきっと…次の『イベント代』に消えるんだわ!) 陽子は、心の中で母親にあやまると。既に原稿が間に合うかどうかと頭を悩ませていた。 「最近、ハガレンは人気あるからなぁ」 彼女の言葉は、母親には聞こえなかった。 This fanfiction is written by RYOKU in 2004.
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酒蔵オフ会幹事ご苦労様、で頂きました。大したことはしていないのですが・・・ ^^;) りょく様のギャグが欲しいとねだり、酒絡みか、トコヨ・ファイブ(「炎帝月帝」様収録作品)風で、とお願いして届いたこの作品は、期待以上に嬉しい作品でした。ありがとうございます〜! 「鋼の錬金術師」の番外編『軍部祭り』大好きですv アニメは見逃しましたが、面白いですよね。 「テニスの王子様」のアニメはたまにしか見れませんが、陽子登場の場面は目に浮かびます。 「バトルロワイアル」も「ワイルド7」も読んでみたいと思いつつもまだですが、世界はわかる・・・ そして、結果はやはり「鋼の錬金術師」なのねv 利広はヒューズ風司会も合いますねぇ。相変わらず配役がニクイです♪ 当サイトでハガレンを扱えるのはこれが最初で最後かもしれないので遊ばせて下さ〜い! |
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