李斎警部が点心白圭の料理長になった日「李斎さんはSPのお仕事をなさっているんですね。大変そうですけど、格好いいです。とてもよくお似合いですよ」 泰麒は常連の李斎に微笑んで言った。今日は李斎が最後の客で、他の客がもう誰もいないので、泰麒は李斎とゆっくり話してみようと思った。彼女はこの店にとって、とても気持ちのいい客だったので、泰麒は李斎が大好きだった。 「そんなことはない。わたしは本当はこういう店で点心が好きな人のために料理を作ることが夢だったんだ。だからわたしは、この店がとても好きだ」 李斎は少し寂しそうに優しく微笑んだ。厳しい仕事であるはずなのに、こんなに優しい笑顔を持てる李斎が泰麒はとても好きだと思った。 「よろしければ、その夢を諦めた理由を教えて下さいますか?」 「大したことではない。難病で入院していた母のために定期収入のある仕事がわたしには必要だった。点心を作ること以外には、体力に物を言わすことしかできそうになかったので、警察に入った。それだけの話なんだ」 「では、今の仕事はそんなに好きではないんですか?」 「人のためになる仕事だし、やり甲斐もある。それに休日にはこうして気に入りの店でのんびり過ごすこともできるしね。不満などない」 「では、わたしと嵩里のために点心を作ってみてはくれないか? ここの厨房をお貸しする」 店の奥から驍宗が出てきて言った。 「とんでもありません! お二人の口に合うものなどわたしには無理です」 「そうかな? 君の感想はいつも料理人を喜ばせるものだ。自身に腕に覚えがなければ言えないと常日頃から思っていたのだが」 驍宗が口元で笑って言うと、李斎は口を引き結び、真っ直ぐな視線で驍宗を見た。 「では、厨房をお借りします」 |
李斎の調理の手際を見つめ、料理が完成すると驍宗は泰麒と共に店の卓子についた。李斎が二人の前に点心を並べ終わって、まず海老蒸餃子を口にすると泰麒は目を見開いた。 「驍宗様・・・」 泰麒の反応に驍宗は頷いた。全てを食べ終えると泰麒は目を輝かせて李斎を見つめた。 「美味しかったです。驍宗様が作った点心以外で美味しいと思ったのはこれが初めてですよ!」 「それは褒めすぎです。でも、気に入っていただけてよかった」 李斎は泰麒が初めて見るとびきりの笑顔で礼を言った。 「よほど点心を作るのがすきなんだな。この腕はどこで身に付けた?」 「大学時代に中華街でバイトをしながら、料理長にしつこく食い下がって教わりました。調理師の免許も一応は取りました。でも、ほとんど独学のようなものなので、商売には通用しないでしょう」 「そんなことはありません! ねぇ、驍宗様?」 「要人の警護で海外にも随分行っているのだろう? そこでも研究は怠っていなかったようだな。独学もそこまで行けば立派な修行だ。羨ましいくらいだ」 「お褒めいただき、恐縮です。でも、ここの月餅だけはどうやっても、似たような味すら出せないのです。あの微妙な甘味がどこから出せるのか・・・」 李斎が溜息をついて言うと驍宗は声をあげて笑った。 「ああ、あれはな干し柿だ」 李斎は目を見開いた。 「そんなに簡単に企業秘密を教えていいのですか?」 「腕がよくて信頼できる料理人はそうそう簡単に見つからないものだ。もう一人ここに料理人がいればわたしも海外の料理の研究が出来るんだがなぁ、そうは思わないか嵩里?」 驍宗が片目を瞑ると、泰麒はくすくすと笑った。 「そうですね。そんな人がいたら心強いですよですよね。李斎さんはそんな驍宗様を助けて下さいませんか? SPよりも給料がよくはないかもしれませんが」 「そんなに簡単に決めていいのですか? わたしはそんなに信用できる人間ではないかもしれませんよ?」 「驍宗様の代わりは李斎さんでなければ勤まりませんよ。それに、驍宗様も防衛大を出た自衛隊のキャリアだったんです。あなた方二人はとてもよく似ていらっしゃいます」 「元自衛隊? では、有事には協力しなくてはならないのですね?」 「まあな。人命救助ならば嬉しいが、戦争に駆り出されないとは限らないな。それまでは平和に点心を作っているさ。協力してくれるか?」 「喜んで!」 李斎警部は翌日、辞表を提出した。予定の警護を果たすまでまだ時間はあったが、近い将来、点心白圭にその姿を見せることになる。 |
「トラブルの絶えない男」で李斎を警部にしたら、とのきさん設定では点心白圭の料理長ですよ、とのことだったので、言い訳SSSを作って当サイトの掲示板にアップしました。料理長も格好いいですよね。そして、この後に驍宗様が料理研究で海外を巡っている間に行方不明になるという設定が相応しくなったと思っているのですが・・・ その陰には国際テロ組織のリーダーである元自衛隊員の阿選が関わり、そこにICPOの正頼や英章登場っていいなあv 臥信でもOK! 載国のメンバーには他に公安や現職自衛隊員、なんてのも合いそうです。「でも、琅燦は警視庁捜査1課科学捜査1係を希望!」と叫んだら、赤狗さんに検死官も合うと言われて、「なるほど」と納得しました。誰か書(描)いてくれないかなぁ♪(これはナバさんの「にんじんあたま」の企画なので、こちらに送らないで下さいね) 海外を巡る驍宗様の下りでは▼の楽しい書き込みもありました。こちらも絵になりません? 赤狗さん >料理研究家の驍宗様のエプロン姿が目に浮かんでしまいます。(紅白縦縞vv激違) とのきさん>そ、それってもしかして…… シルクハットのみを旅の友に連れた、某ギャルソンがいたりいなかったり……?(違) 月餅の甘味を干し柿で出す、というお話は浦沢直樹氏の「マスター・キートン」から使ったのですが、今では一般的だそうです。 とのきさんの「スウグが月餅なんですね!! 「よい狩り場」は干し柿なんですね…!!(感動!)」の感想から、赤狗さんが >カワにすう虞マークの月餅って、買いです! >カワは白黒マーブル模様ですう虞の刻印あり、中は果実餡で『許都』って製品名で売り出されているんですね。 >でもって、『飛燕』は黒餡ですね。 と、のたまったお言葉からナバさんの楽しいイラストが出来上がったというわけです。カフェ・シリーズは何度でも美味しい企画で楽しいですよね。それに、パラレルだから原作にない組み合わせも出来て面白いのです。 |
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