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若干１６歳でKIMPA Co.の社長に就任した陽子は会社にとって飾りにしか過ぎなかった。なにせ彼女はまだ高校生である。当然ｂQの実権を持つ専務取締役ＣＥＯの靖共が会社を動かしていた。不慮の事故死を遂げた先代も従姉妹の女子大生だった為、KIMPA Co.はもう長いこと靖共にわが物顔で取り仕切られていた。 一方、麦州支社長の浩瀚はKIMPA Co.の業績に不審を持ち、秘書の柴望とともにその原因を調査していたが、靖共の裏金作りのからくりに気付いた時には相手に先手を取られ、浩瀚は社長の承認でKIMPA Co.を解雇されてしまったのだった。会社に何の義理もない浩瀚だったが、時間をかけて集めた証拠を無駄にするつもりはなかった。浩瀚は警視庁２課にいる大学時代の後輩の桓堆と共に会社で作られた裏金の行き先を調査することにした。 桓堆は靖共の邸を見張っていた部下に浩瀚が中に入ったまま出てきていないという報告を受けて頭を抱えた。 「まったく、靖共は黒幕と呼ばれる政治家連中にも金を配っているから、そのツテで暴力団をも手駒に使えるんだ。闇から闇に葬るなんて朝飯前だ。まあ、あの人なら闇に葬られない手配ぐらいはしてるだろうが・・・」 桓堆は暫く考えてから空を見上げて深く長い息を吐くと「仕方がないな」と呟いて車に乗り込んでその場を立ち去った。 暫くすると靖共の邸の前に魚屋の車がやってきて、門が開けられた。それが誰であるかは張り込んでいた刑事達にはわかっていた。 桓堆は厨房の出入り口から愛想良く入り込み、首をかしげる使用人達に写真付きのバッチを見せて「人の命がかかっているから」と中に入っていった。なおも追いすがってくる者には低い声で「公務執行妨害で逮捕されたいか？」と振り向いただけで、相手は黙った。 見つけ出した浩瀚は案の定、見張り付きの部屋の中に転がっていた。その見張りを眠らせ中に入って浩瀚抱き起こすと、身を捩って呻いた。桓堆は浩瀚の首筋に手を当てるとその熱さに眉をひそめた。 「骨をやられてますね。立てますか？」 浩瀚は首を振った。 「あばらと脚をやられている」 |
Illustrated by NAVA in 2003.
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桓堆は溜息を突いて、仕方なく浩瀚を横抱きに抱いて運ぶことにした。 「まったく、無茶な真似をしてくれますね」 そう言った時、背後から爆発音がした。桓堆は浩瀚を睨め付けた。 「何をやったんですか？」 「安心しろ、音だけだ。ああ、発煙筒も使ったな。警察が入りやすくなっただろう？」 「そんなもの、どこから手に入れたんですか〜！」 「奴が逃げるぞ！」 眠らせていた見張りが気付いて叫んだ。駆け付けた仲間がサイレンサー付きの銃を発砲してきた。桓堆は浩瀚を肩に担ぎ上げて全速力で駆け出した。 「貴方という方は〜〜〜！！！」 気のいい熊の姿の警部はそう叫んで銃弾の雨の中を駆け抜けていった。 |
Illustrated by NAVA in 2003.
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「いくらなんでも、人の相棒を横取りするなんて酷いですよ・・・」 「彼女は社長に望まれたんだ。本人も喜んで引き受けたのだがな。なんなら、お前もウチに来るか？」 「ご免です。俺はこれが天職なんです。いくら金を積まれても変える気はありません！」 「今度酒を奢ってやるから、機嫌を直せ」 「「翠薇洞」でなければ許しませんからね」 桓堆の気が済むまで飲ませると軽く十万は超えるであろう店の名に、浩瀚は僅かに目を見開いたが、目を潤ませて自分を睨め付ける大学時代の後輩にくつりと笑って、片目をつむってみせた。 「おやすいご用だ」 |
