Illustrated by Zanma Kota in 2003.
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「慶の様子も随分落ち着いたみたいだねぇ」 鮮やかに色づいた紅葉を見上げて利広が言った。 「お前は色気より食い気だな」 六太は団子を食っている尚隆に溜息をついて言った。 「こんな面子で色気など気にしておれるか!」 尚隆が言うと六太はやれやれと首を振った。 「それはどういう意味だい?」 利広は六太に微笑んで訊いてきた。六太は上目遣いで利広を見た。 「花を愛でるより食い物の方がいい人間に言うんだ」 「それは蓬莱の諺なのかい?」 六太は眼を見開き、尚隆の袖を引っ張った。 「おい、こいつは何者なんだ?」 「俺たちより百ばかり余計に生きている、ただの風来坊だ」 六太が恐る恐る振り向くと利広はにこりと笑った。 「利広でいいよ」 官吏ならば自分たちより長く生きている者もいる。慶の太師も彼等より遙かに年上なのだ。しかし、この男は官吏にも飛仙にも見えなかった。それに、風来坊の格好をしていても物腰には育ちの良さがあった。そんな人間で自分たちより年上で放浪する物好きとなれば六太には唯一人の人間しか思い当たらなかった。 「俺は六太だ。こいつとはどういう知り合い?」 六太は利広に尋ねた。顔が少々強張っていた。 「こいつとはろくでもない処でしか会わん」 利広よりも先に尚隆が吐き捨てるように言った。 「酷い言いようだね。ろくでもない処にしか現れないのは君の方だよ。わたしはあちらこちらを流れ歩いているんだから」 「それでこいつの機嫌が悪いのか」 六太が呆れて言うと、尚隆は軽く鼻を鳴らし、団子の串を後ろに放った。 「会うべき場所で会う日が近づいてきているようだね」 利広は立ち上がると六太に向かって微笑んだ。 「今回の旅は君に面識を得られたことが最大の収穫だね」 「次に会う時にはしおらしい格好で、しゃあしゃあと初めましてと挨拶するお前に会えるというわけだ」 尚隆は自分の脚に頬杖を付き、にやりと笑った。 「わたしも威厳があるという君の姿を楽しみにしているよ」 利広はそう言うと二人に背を向け、笑いながら立ち去った。 |
残暑見舞いアンケートに答えて頂いた秋見舞いです。今の季節に相応しい、芸術の秋も楽しめる作品ですよね。格好いい野郎同士ののどかな光景というのもいいでしょ?(わたしの駄文が寒風を吹かしていますが・・・) 残間恒太様は
帰山コンビ同盟の管理人様でもいらっしゃいます。おかげで帰山コンビの駄文を書くきっかけを得たわけですが、可もなく不可もなくといった調子になってしまいました。野郎同士の寒い会話を書くことが好きなわたしですが、利広は難しいです。 残間恒太様の他の作品は天宮図鑑でご鑑賞下さい。(メニューに近道リンクがありますよ♪) −メニューへ戻るにはウィンドウを閉じて下さい−
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