Illustrated by Mizunashi Mina in 2003.
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四阿で紅の髪を持つ彼の主が頭を抱えて呻っていた。 「いかがなされたのですか?」 浩瀚が声をかけると眼下の華奢な肩が飛び上がり、ゆっくり振り向くと彼を見上げてきた。 子供のような幼さはないが、大人とも言えない少女の貌、そして少女には似合わぬ毅い光を湛える碧の瞳が浩瀚を捉えた。彼女の手には小さな帳面があり、そこには浩瀚の見知らぬ文字で埋められていた。 「ちょうどいいところに来てくれた。太師に府第を実際に回って見てみてはといわれたので、さっきまで景麒と地官府へ行っていたんだが、田猟(でんりょう)の説明が要領を得なくてまとまらなかったんだ」 浩瀚は彼女の懸命さに微かに笑みを浮かべた。 「主上にいきなり説明を求められても彼等には答えられないでしょう。なぜならば、彼等には主上が知ろうとしていることを理解できないからです。主上は純粋に府第の仕組みを理解しようと努力されておいでですが、彼等は自分たちの仕事について説明はしていませんでしたか?」 「言われてみればそうだったな。訊き方がまずかったのか・・・」 彼女は石案に肘をついてその手に頭を載せると溜息をついた。 「主上は府第を訪れる前に府第のしくみを実際に見て知りたいのだと目的をはっきりと伝えられたほうがよろしいでしょう。そして事前にその府第の構成とそれぞれの役目や名簿をお求めになり、視察の折りには詳しく知りたいことだけを訊くならば終始書き付けをする必要はなくなるのではありませんか?」 浩瀚の言葉に彼女は眼を見開き、頬杖を付いた。 「確かに、太師はそれを解らせるために視察を勧められたのか」 「そうでしょうね。次回の視察は冢宰府へおいで下さい。事前の資料をご用意し、詳しく説明の出来る者を選んでおきましょう。府第の基本的な仕組みなど役目が違うだけでそうそう異なるものではありません。以降の視察にもお役立て頂けるでしょう。そして、主上がそれぞれの役目をすっかりご理解できるようになった折には、実態を把握するために抜き打ちで視察なさったほうがよろしいかと思いますが」 彼女は浩瀚の最後の言葉にわずかに頬を膨らませた。 「そこまで考えられたら苦労はしない。それよりも浩瀚はこんなにものを知らない女の子供が王だなんて理不尽だとは思わないのか?お前のように人を使うことを心得ている者が王ならば皆の苦労も減るのにな」 彼女は溜息をついて浩瀚を見上げた。 「知らないことでも知ろうとすれば覚えられる程度のものです。人を使うことも実は難しいことではありません。小さなことでも目的を明確に示してやればそれぞれが己の役目を果たすものです。王とはその国に必要な道を示せる者が選ばれるのではないでしょうか。王が我々と同じ事をなさる必要はありませんよ」 「浩瀚は明確でなくても察してくれるから助かるな。これからもよろしく頼む」 「人に頼られて悪い気がする者などおりませんね」 浩瀚が澄まして言うと、陽子は笑い出した。 「何がおかしいのです?」 「あ、すまなかった。太師も似たようなことを仰っていて、それが若い女子に頼られれば誰でも喜ぶものだから、わたしが気にすることはないと。浩瀚にばかり頼れば他の者が嫉妬をする。それに浩瀚を付け上らせてはならないと言うんだ」 「太師の言いそうなことですね。しかしわたしとしても他の者に嫉妬などされたら仕事に支障をきたしかねないので、ほどほどにと申し上げておきましょう」 「そうする」 言って陽子はなおもくつくつと笑い続けた。 |
みずなし様の初浩瀚を3000ヒットキリリクで頂きました。みずなし様の妖獣図鑑に惚れ込んでいたのですが、いつか浩瀚を描くと仰っていたので、即描いてもらおうと思ったわけです。妖獣も捨てがたかったけど、こちらはこの次の機会にします。←まだ狙うつもりかい! みずなし様から送っていただいた浩瀚のイメージは家庭教師だったのです。こんなに爽やかな絵にわたしが駄文を付けられるかと冷や汗をかいたわけですが、何とかなりましたよね?しかし、ちょっとでも怪しくしないと気のすまない腐れ根性が・・・ 駄文はみずなし様に捧げますが、返品可能ですのでご安心を。みずなし様の絵は雪月ふくろう庵でじっくり堪能してください。本当に素敵な −メニューへ戻るにはウィンドウを閉じて下さい−
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