Illustrated by co in 2003.
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陽子の堂室にいた。しかし、彼を呼び出した本人の姿がどこにもなかった。ただ一つの堂室を除いては・・・ どういう訳か彼女の部屋には誰もいなかった。彼女を護るはずの小臣も、訪れる者を案内してくれる女御も誰もいない。浩瀚はこの堂室に一人で入ることは堅く戒めていた。この状態で残りの堂室に足を踏み入れるわけにはいかなかったが、いつまでたっても誰も来る気配がなかったので浩瀚は観念して、最後の堂室の扉に手をかけた。 奥にある牀榻の帳は開かれ、彼女はその上に流麗な曲線を描きながら上半身を起こして横になっていた。彼女の碧の視線がゆっくりと浩瀚を捉えた。たおやかな腕、何気なく放り出された素足に襦裙の下の肌を知り尽くしていてもなお、鼓動が大きく跳ねた。手に彼女の肌の感触が甦ってきた。 「このような処にお呼びになるか」 浩瀚は低く抑えた声で言った。 「思ったよりも早かったな。わたしは政務を終えてからと伝えたはずだったが」 「それは伝言通りにしております」 「怒っているのか?」 「主上は、わたしが見張りに気付かれずに内宮を出て行けるとお思いですか?禁軍兵士の優秀さは主上が一番わかっておられるはずです」 「やはり、いやか・・・」 「わたしの堂室でならばいくらでもお付き合い致します」 「いつまで?」 小首をかしげて見つめる碧の瞳に浩瀚は微笑みかけた。 「主上がわたしの冢宰の任を解いて下さるまでです」 陽子は溜息をついた。 「それはもうしばらく待っていてもらわなければならない」 その時、扉の外から女御が陽子を呼ぶ声がした。陽子は牀榻から降り、視線で浩瀚を牀榻へ向かわせた。浩瀚が履き物を手に取り、牀榻に上がると陽子は帳を下ろした。そこへ女御が酒肴を載せた盆を持って堂室に入り、恭しく礼を摂った。 「仰せのものをお持ちしました」 「ありがとう」 女御は一瞬立ち止まったが、卓子に盆を置くと三つ用意した酒杯の一つを手に取り、陽子に向かって微笑んだ。 「ごゆるりと」 女御は牀榻に向かって言ってから堂室を出て行った。陽子はくつくつと笑いながら、帳を上げた。 |
「女御を味方に付けておいて正解だったな」 「敵に回すと厄介だからですよ」 浩瀚は不機嫌な声で衾(かけぶとん)を上げた。陽子は浩瀚の退路を塞ぐようにして牀榻に上がった。 「見張りはお前を通してくれるよ」 陽子は浩瀚を見下ろして言った。 「後で桓堆の小言が待っています」 浩瀚が陽子を見据えて言うと陽子は微笑んだ。 「耐えてくれ」 浩瀚は息を一つ吐くと陽子の腕を引き、臥牀に横たえた。 「後悔しますよ」 陽子の両肩の脇に手を置いて搾り出すように言った。 「何を?」 真っ直ぐに自分を見つめる碧の瞳を見つめながら、その頬に掌を当て、親指で桜桃色をした唇をなぞった。 「明日の主上の政務はありません。そして、主上をお帰しする必要もない。加減はできませんよ」 「それがなぜ?」 陽子の真っ直ぐな視線が胸に痛かった。 「男を知っただけでは女にはならない、ですがその意味を知ったときには袍子を着た貴方を少年と間違える者はいなくなる、そうなったら誰にも隠し覆すことはできないのです」 浩瀚はそう言うと陽子の首筋に顔を埋めた。 「それはお前の代わりを早く決めろということなのだな?」 陽子は浩瀚の頭を抱えて頬をよせた。 「お前の心配するようなことにはしないし、後悔もしない」 浩瀚は頭をもたげて陽子を見下ろし、笑った。 「あの時と同じ襦裙なのですね」 「うん、でもあの時より少し胸が苦しくなったかな?」 笑って言う陽子の片方の手を取り、自分の首筋に置くと、もう片方の手も浩瀚の首筋に回された。 確かに、同じ襦裙を着ていても、かつてとは印象が異なっていた。どんなに少女の姿を惜しんでも間違いなく花は綻びかけている。これ以上は無駄なあがきはするまいと浩瀚は襦裙越しに柔らかな胸に手を当て、ゆっくりと動かした。そして、桜桃色の唇の奥にある柔らかな感触を求めて唇を落とした。柔らかな胸の頂きはすぐに布を押し上げ、掌をくすぐった。浩瀚は甘い吐息を聞きながら少女の襦裙を解いた。 |
13℃(管理人:co様)の1666を踏んで頂きました。(4ヶ月前に!)遅くなって申し訳ありませんm(_ _)m お題は「牀榻の上、白い襦裙、足チラリ」だったのですが、企みとは外れた美しさだったので、そのまま頂いてしまいました。coさん、妙なリクに応えて頂きありがとうございます! こんな怪しい駄文でもお気に召したらもらってやって下さい。 そして、誘い受けに挑戦してみたのですが、如何でしょう? それにしても、わたしの誘い受けって色気がないですねぇ・・・ −メニューへ戻るにはウィンドウを閉じて下さい−
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