彬 様〜氾王&陽子イラスト

Illustrated by akira in 2004.





我が侭な宝玉

 氾王呉藍滌は祭祀や典礼、他国への正式な訪問のたびに起こるちょっとした怪現象に悩まされていた。それは壁や天井にあった飾りが目の前に落ちてくるとか、手も触れていない酒杯が割れるとか、一つ一つは些細なことだったが、それが毎回となると話は別だった。人為的なことにしても、それに関わる共通の人物は特定されず、また目的も謎だった。
 そんなある日、藍滌は陽子の夢を見た。夢に現れるならば、もう少し美しく飾った姿か、華やかに笑った姿であってもいいはずなのだが、夢の中の陽子は官服を着た凛々しい姿だった。そして、不思議なことにその腰には藍滌が気に入っている佩玉(おびだま)があった。それは赤銅色の瑪瑙が炎のように揺らめく虹彩を抱き、鳳凰の形に象られていた。  藍滌は起き上がると、夕べまで身に付けていた佩玉の紐を掴み、玉を睨めつけた。思えば男王の格好をしたときにしか怪現象は起こらない。その時には常にこの佩玉を身に付けていた。
「そなたの仕業か・・・」
佩玉は僅かにゆれて、鳳凰が藍滌を見つめていた。

「景王は珍しい玉や、質のよい高価な玉が人を選ぶことを知っておるかえ?」
「そんなことがあるのですか?」
範国を訪れた陽子に藍滌が言うと、陽子は首をかしげた。
「玉を扱っていると、不思議な話をよく聞くのだよ。持ち主を次々と不幸にしていく美しくも妖しい玉や、手にした者に幸運をもたらす玉の話などは多いのだえ」
「そういうお話でしたら蓬莱でも耳にしたことがあります」
「玉は己の波長に合う者に所有されることを望むものらしくての、それが人を惹きつけるほどの玉ともなれば、明確な意思を持つようじゃ。ここに景王のものとなることを望む玉があるのだよ」
藍滌は優雅に笑いながら、卓子に置いた螺鈿の施された箱の蓋を両手で恭しく開けた。それを目にした陽子は目を見開いた。
「これは氾王がとても大事にしていらした佩玉ではありませんか」
「そう。したが、前回慶に正式に訪れた折、こやつは景王に惚れたようじゃ。以来、わたしへの嫌がらせが多くての。思い通りにしてやるのは癪だと思っておったのだが、景王よりこちらに非公式で視察に来たいと青鳥が来たのじゃ。あまりにも単純であからさまな思いに気が抜けてね、思いを叶えてやる事にしたのだよ。景王は受け取ってやる気はあるかえ?」
佩玉の飾り紐は陽子に似合うように付け替えられていた。
「いいのでしょうか?」
「いいも、悪いも、陽子に振られたら、今度は何をしでかすかわからぬ。こちらとしては是非とも受け取ってもらいたいくらいじゃ」
不機嫌に玉を睨めつける藍滌に陽子はくつりと笑った。
「では、ありがたく頂戴いたします。それにしても、以前までは氾王に使われることを望んでいたのですから、わたしと氾王は波長が近いようですね」
陽子の言葉に藍滌は玉を見つめる視線を和らげた。
「そうかもしれぬの。たまにしか使わぬわたしよりも、景王に常に身に付けられた方がそれも喜ぼう。大事にしてやっておくれ」
陽子は輝く笑みを浮かべて「はい」と誓うと、その玉を手にした。玉に封じ込められた炎が勢いよく燃え上がった。

2004.01.26 UP
This fanfiction is written by SUIGYOKU.


CrossRoadの彬様から頂いたイラストです。ご挨拶に行って、彬様の氾王に叫んできたら氾陽同盟をご存知とのことで、この作品を描いて下さったのです。彬様の氾王って、男らしい色気があって好きなのですよvvV
この格好よさに合うような氾陽を、と思っていたのですが、頭の中が宝石に占められてしまったので、こんなことになってしまいました。最初に書いたSSSがあまりにもイラストに不釣合いになってしまい、書き直してみたのですが、まだ物足りない気が・・・
この玉はメキシコで産出されるファイヤーアゲードです。陽子に合いそう、と以前から思っていたので赤い宝石はこれしか浮かばなかったのです。そして、宝石が持ち主を選ぶ、というのもよく聞きますよね。
このSSSと最初に書いたダイヤモンド編の『光輝くもの』は彬様のみ、お持ち帰り可ですが、強制ではございません。

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